2009年05月24日

「天地人」はこんなにヘンだ!(週刊朝日 2009年05月29日号配信

「天地人」はこんなにヘンだ!(週刊朝日 2009年05月29日号配信掲載)

NHKの大河ドラマ「天地人」に、もう我慢ならない。1月の放送開始から、戦国武将らしからぬ泣き虫の主人公や、史実に忠実とは思えない設定、チープな演出などに違和感を覚えながらも見続けてきたが、いい加減うんざりしてきた。「義と愛の人」直江兼続は、視聴者をどこに連れていこうというのか。

 前半のヤマ場のひとつ、「本能寺の変」(5月10日放送)は、こんな感じだ。

 織田信長(吉川晃司)軍との戦いのなか、主人公で上杉家に仕える軍師・直江兼続(妻夫木聡)は、しばしの休息を得て、結婚した お船(常盤貴子)の待つ屋敷に初めて帰る。

用意された食事を食べつつ、見捨てた将兵たちを思って涙を流す。一方、京では明智光秀(鶴見辰吾)が謀反を起こす。死を覚悟した信長の前に、上杉謙信(阿部寛)の亡霊が現れ、信長に説教をする。信長に仕える忍びの初音(長澤まさみ)は、爆発する本能寺から脱出し、光秀を襲う。

「違和感」ポイントは次のような点だ。@子供のころから泣き虫だった兼続は、成人しても、上杉家の家老になっても泣き続ける。「もう泣かない」と宣言してからも泣く。「愛」の人を演出しているにしても、あまりに弱っちすぎる。A信長と謙信、一度も顔を合わせていないのに、なぜかわかり合ってしまう。B初音は架空の人物。これは歴史ドラマによくあることなのだが、光秀の首を絞める襲撃は中途半端だし、光秀を助ける兵も出てこない。このほか、初音はワンピースのような現代的な服装も身につけ、縦横無尽に重要な場面に姿を現す。信長とワインを傾けたり、武将たちと対等に話したりするが、あまりに現実味がない。

そんなに目くじら立てなくてもと言われるかもしれない。だが、「天地人」は、そんなことばかりなのだ。

 こんな現象がある。

 NHK大河ドラマといえば、舞台となった地に観光客が殺到するのが“お約束”。直江兼続の地元も、誘致運動の末に、大河ドラマを勝ち取った。だが、その地元でも「史実と違いすぎではないか」と首をかしげるのだ。

 たとえば、兼続ゆかりの春日山城跡(新潟県上越市)に多くの観光客が訪れるようになったが、がっかりして帰る人も少なくないのだという。お目当てにしていた「謙信の岩屋が見つからない」というのだ。

天地人」では、上杉謙信や養子の景勝が、岩をくりぬいた洞のような部屋で毘沙門天に祈りをささげるシーンが頻繁に登場する。だから観光客が岩屋を探そうとするのだが、見つかるわけがない。もともと春日山城に岩屋はないからだ。

 上杉家の歴史に詳しい新潟県文化財保護連盟理事の花ケ前盛明氏はこう話す。

「撮影前にチーフプロデューサーから相談を受けたんですが、毘沙門堂を実際のお堂ではなく、岩屋にしたいと言われたのです。私は『春日山城には岩屋がない』と説明したのですが、これまでの謙信のイメージを変えたいとのお話でした」

 歴史の詳細がわからないところに創作的要素を入れるのはいいが、史実と明らかに違う設定を創作するのはいかがなものだろう。

妻夫木くん演じる兼続のキャラ設定も変だ。元服の後も稚児のようにサラサラの前髪をなびかせ、初陣では敵兵を殺せずに落ち込む。こんな戦国武将はいないだろう。そのくせ、忍者のように水中を泳いで、敵に囲まれた城に単身で潜入する。いくらなんでも上杉家の家老の行動とは考えにくい。

 合戦シーンなどで、あたりが急に暗くなり、スポットライトに照らし出される、舞台のような演出にもなじめない。「天地人」は演出家(ディレクター)が複数いて、そのひとりが多用する手法だが、安っぽく感じさせる。戦国時代劇の華である大合戦シーンはほとんどなく、予算が厳しいのかなあ、と詮索してしまう。

 このほかにも、謙信が信長軍を破った手取川の戦いに羽柴秀吉が最初から参陣しないなど、史実や定説との食い違いは多い。

 大河ドラマといえば、時代考証の正確さで定評があったはず。だが、NHK関係者は、制作現場の内情をこう明かす。

「週1回のペースで時代考証の先生などに参加してもらって会議を行いますが、『天地人』の場合、以前の大河に比べて、専門家の先生から脚本の書き直しを指示されるケースが多い。脚本の小松江里子さんは、当時はない『平和』や『家族』という言葉をせりふに入れてくる。制作サイドも史実を重視しようとする志向が乏しくなっている」

天地人」の時代考証を担当する小和田哲男・元静岡大学教授は、苦しい胸の内をこう明かす。

「演出の必要上、ドラマでは史実を変えることはよくあります。できるだけ、史実と違う点は指摘しますが、プロデューサーや演出家などに妥協することもあります。史実がよくわからない部分は、どうしても彼らの裁量で描かれてしまいます。今回の登場人物も制作側でかなり作られています」

 放送評論家の松尾羊一氏は手厳しい。

「大河ファンも新しいタイプの大河ドラマを見たいと思っているけど、『天地人』はそんな境地にまったく入っていない。兼続の成長を見たくても、いつまでたってもグズグズと泣いている。結局、ドラマのなかで何が描きたいのか、放送開始から5カ月も過ぎているのに、なかなか見えてこない。歴代の大河ドラマのなかで最低ランクだろう」

 思えば昨年の「篤姫」も当初は、少女時代の篤姫(宮アあおい)のコミカルな描き方などに批判があったが、その後、人生を切り開く女性像が人気を呼び、視聴率はぐんぐん上がった。

 一方、「天地人」は、「篤姫」人気を引き継ぐように20%を超す高視聴率でスタートしたものの、最近は20%を割る回も出てきている。

「違和感」や視聴率についてNHK広報局に聞くと、

「多くの視聴者の皆さまからわかり易くておもしろいとのご意見を多くいただいております」

 とそっけない回答だった。まあ、身内のドラマを悪く言うことはないのだろう。

 と思っていたら、冒頭の「本能寺の変」の回で、信長とともに本能寺が大爆発するシーンに、空、水田、光秀という三つのカット(「天地人」を表すらしい)がごく短時間挿入されたことが、読売新聞に「サブリミナル的?演出」と指摘されるケチがついた。この点を改めて問い合わせると、今度は妙に突き放すような答えが返ってきた。

「演出担当者が、死に直面した信長の心情を表現したかったようです。ただ、あまりに短い時間で3カットも入れているため、視聴者には何が映っているのか、よくわからなかった。結局、演出担当者の狙った効果が全く得られなかった。今回のケースはいいお灸になったと思います」

 NHK内部の「天地人」への「愛」が薄れたのかと、ちょっと心配してしまった。

★★★

“歴女”の囲い込みでもNHKに後れをとっている民放の嘆き
五月人形、一騎打ち 政宗天下に迫る「愛」
【KANSAIハヤ耳】男の“勝負”下着「甲冑パンツ」
大河「天地人」ボーイズラブ風?で漫画化
NHK、大河ドラマ「天地人」でサブリミナル的?演出
NHK『天地人』織田信長役吉川晃司さんインタビュー(NHK・HPより)

★★★

ブロガー唖然!?『天地人』ほか、天地人話題&第1回〜第16回



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